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「さぁて、と。渡す順番は……好きなようにすればいいのかしら」
質の高い紙で出来た封筒を、エンゼルは改めて見つめる。よく知った名前ばかりが並ぶ。
校長が本名で書かれていなかったり、リイラとゲルパーが併記だったりと、色々な事情が垣間見える。
部屋に戻っても、アイリアはエンゼルに気付く様子はなかった。顔を赤くして悶えている。
「アイリア? アーイーリーアーさん?」
「───────!────……」
声になっていない。一体どれだけ興奮したらそうなるのだろうか。そもそも、そんな時間人はずっと興奮できるものだろうか。
「そんなに私の家に行きたかったの? ほんとにそれでいいの? 実家がよかったとか言わない?」
「んーー、んーー、んんんー!」
ここまで意思疎通というのは困難なことだろうか。本当に話せない状態になるとアイリアは手がつけられない。誤解をネガティブに深めたりするパターンならまだしも、言葉になってないのは厄介だ。
「もう、分かったわよ。いや分かんないけど。分かるようになるためにとりあえず寝なさい。寝たら落ち着く。たぶん」
「んんー……」
そしてベッドに顔をうずめたまま、奇声は段々と寝息に変わっていく。ようやくエンゼルはゆっくり考える時間を得られたのであった。
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