僕の世界

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君の言葉に、掛け違えたボタンをひとつずつ外していくような感覚に陥る。 本当の僕は、酷く攻撃的で、厭味ったらしくて、人を傷付けてばかりだった。 誰よりも、この僕が、僕の事を嫌いだった。だから、覆って隠して閉じ込めて来た。 けれど君は、じっとその硝子玉の様な瞳で僕の中心を見つめて、次々と言い当てる。 覆い隠していた自分が、露になる。 「君に、僕の何がわかるんだよ」 声を荒げた。君はまた少し笑って、困ったように眉を顰める。 「分からないわよ、だって私は貴方のこと、何も知らないもの」 「じゃあそう言う事言うなよ」 「言うわよ、だって、もしも貴方が本当のことを言ってくれてなかったとしたら、そんなの哀しいわ」 困ったように下げられている眉に、楽しそうに弧を描く唇。 相反する感情をひとつの顔で表現した君は、僕の目を見て言った。 「すきなことがあるんだったら、堂々としていればいいじゃない」 「は?」 「私は、絵を描くことがすきだわ。私は私の世界を、外に出すのがすきなの」 そう言った君は、酷く真っ直ぐだった。ただじっと、静かに、僕の目を見ていた。 まるで、凪。 その瞳に、何故だか自分が酷く惨めに思えた。
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