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「俺は認めないぞ。勝手に願うだけ願って、叶えてやろうと奮闘しているのになんだその態度は」
「え、なに言っているの? 願いって」
「『鈴と仲良くなりたい』ってたしかにそう願ったよな」
「な、」
「それで『忘れられますように』とかどんだけ自分勝手なんだよ」
そんな覚悟で俺は奮闘していたのかと考えるともう言わずにはいられなかった。
「恵茉にとってその程度だったんだな、スズは」
「そんなわけない!」
「その程度。程度が低い。その程度」
「うるさい! 勝手なこと言わないで、何も知らないくせに」
「何にも知らない。自分の勝手な意見を、考えを相手に押し付けたりしたら反発する。今がまさにそれだ。だから結局は自分で気づいて納得するしかない」
「だから納得したでしょ」
「それは本心か?」
「本心だよ」
「じゃあ気づいているのか?」
「気づいているよ」
「じゃあ何に気付いているっていうんだ? 言ってみろよ」
「なんでそんなこと言わなきゃいけないの」
売り言葉に買い言葉、このまま平行線が続きそうだ。今の恵茉に何を言ってもどうにもならないことは目に見えていた。
「恵茉が願ったからだろ」
「願ったからって……、さっきからなに、神様にでもなったつもり?」
「恵茉はそう呼んでいるだろ」
「本気で思ってるわけないでしょ、神様なんているわけないし、信じているわけないじゃない」
「じゃあ願うな」
「願うのなんて勝手でしょ」
たんっと右足を鳴らす。スリッパで床を思いきり叩いたような音が鳴るも、恵茉は一歩たりとも引く気はないと言わんばかりに堂々としていた。
「……あぁわかった。なら叶えるのも勝手だ」
手を差し伸べるようにして伸ばし、恵茉の視界を覆い尽くす。これ、アイアンクローっていうんだっけと思いながら力入れずなんちゃって。恵茉は両手で必死に振りほどこうと抵抗していた。
「そうだな、漢字のテストをしてたら黒板にその文字が書いてあることに気づいた、的なのだと思えばいいさ」
脳を掴む感覚で意識を集中させる。
「恵茉の気づきが正解かどうか、答え合わせだ」
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