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「どうしたの、そんなに泣いて??」
娘は皆を抱きしめながら聞いた。
「っく……だって…まきづののおじさんがっ……」
「っ…ゼラ姉ちゃはもうかえってこない、っていったんだぁ!!」
娘は首を傾げる。
「??あたしが帰ってこない、って、誰が言ったの??」
「巻角族のおじさんだよ!ゼラ姉ちゃんを王子様のとこにやったらいいって言った…」
「あぁ、あの貴族様??なんでそんなこと言ったんだろう??」
巻角族と言えば、低魔族で魔力は低いがずる賢く、商売が上手い者が多いといわれている。
「…貴族だと……?…どうせ名声に逆上せた成り上がりの者だ…そのような輩、品があるわけが無い」
彼はすぐに察した。
人当たりが穏やかで頭のあまり良くない小角族のこと、巻角族の者達に上手く言いくるめられ、この娘を自分に差し出す羽目になったのだろうと。
「っ…おじさんが、弟王子様が見つからなくて怒った王子様が姉ちゃんを死ぬまで痛めつけて閉じ込めるだろう、って言ってたんだ…!」
「わぁぁん!もうかえってこないっていわれたんだ〜!!」
まさに娘に対して自分がしようとしたことを言い当てられ、彼は何も言えずに黙り込む。
「…。」
娘は泣いている子供らに優しく笑って言った。
「王子様は優しいからそんなことしないよ?それにギダ様が、王子様は本当は優しいんだ、って言ってたでしょう?王子様はあたしを帰してくれたよ、だからあたしは帰ってきたんだから!もう泣かないのっ」
帰ってきたとはいえ、無事なんかでは無い。
娘の命の源でもある角を強く絞めあげた上、清らかだった娘の身体を無理矢理散らしたのだから。
娘はそれを誰にも言っていない。
それでも娘は変わらず王子は優しいと言い、事実、王子の為にと危険な森へ弟王子を探しに行っている。
「…こんな娘でも、私のした事を忘れたはずは無い……」
娘は変わらず笑って子供らの頭を撫でた。
「大丈夫。王子様だって弟の王子様が見つかったらきっと、元気になってくれるから…!」
娘の明るい言葉に、子供らは泣きながら頷いた。
そして、近くにいた彼にようやく気付いたらしい。
「…へいしさまぁ??」
「兵士様だぁ…!!」
「兵士様はねぇ、あたしを助けてくれたのっ!」
娘は誇らしげに言った。
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