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「この兵士様はね、王子様くらい強い魔力を持ってるんだって!迷ったあたしを見つけて助けてくれたりね、迷いの森も出入り出来るんだよ!」
娘は自慢げにそばにいる彼を子供らに紹介した。
「あの森を!?すごぉい!!」
「今日は兵士様がお客様だから、忙しいだろうからちょっとだけど宴をするよ〜!みんな、お手伝いしてきてね!」
子供らは元気に、はぁい!と返事をすると、皆が集まっている広場に揃って走って行った。
「…。」
「ゆっくり歩こ〜♪」
子供らを見送ると、娘はまた歌いながら呑気に歩き出した。
「お前……王子を恨んでいないのか…?」
「え?どうしてですか??」
心妙な面持ちで聞いてきた彼に、娘はまたキョトンとしてそちらを見た。
「…お前は『相手』の為に、低魔族の娘を贄に差し出せと言われて城に来たはずだ。痛い思いをし、出て行けと……」
彼は、なぜ娘は自分を恨まないのかが疑問で仕方がなかった。
しかし、娘から返ってきたのはまた呑気なもの。
「ん〜と…悲しかったです、役に立てなくて…。でも、王子様はあたしにとって憧れだから!!」
「憧れだと…?」
彼は娘を嘲笑った。
しかし娘は、そんな彼を見て真面目な顔。
「きっとお仕事いっぱい。大変なのに、この世界のみんなを強い魔力で守ってくれてるんですよ〜?それなのに行方不明の弟王子様の心配までして!あたしなんかもっと混乱しちゃう!あたしには出来ないから、すごいなって!」
「…。」
世界を守ることは、両親から力を買われてやっていた義務。弟には出来なかったことの一つ。
世界を魔力で包み、見通す為の力。
そばで見ていた弟はそれを、目を輝かせて凄いと言ってくれた。
自分自身はやりたくてした事でもないのに……
娘は目を伏せて続けた。
「励ましたかったのに、私じゃダメだったんです…王子様、きっと私じゃ嫌だったんです…。弟の王子様じゃないと、そばにいてほしくなかったんじゃないかなって……だから森まで探しに行ったのに…」
「…馬鹿な……」
彼は呟く。
何も知らないくせに余計な事をした娘。
しかし弟がもう帰っては来ないことを、自分は周りに何も言わなかった…
「そうですね、バカなんですあたし、きっと。…でも弟の王子様が見つかれば、きっと喜んでくれます!今度こそ王子様を見つけますよ!!頑張りますっ!」
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