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娘の家族
「…奴はもう……」
「え??」
彼は高魔族こそが尊いものだと信じていた。低魔族や、まして人間など、魔力を持たぬものは全て下だった。
魔力が低かったとはいえ実の弟が人間になりたいと出て行ったなど、彼からすれば恥ずべきこと。
しかしもうその弟は、二度とこの世界には帰らない……
「兵士様も、弟王子様がいなくなって、悲しいですか??」
自分がいま城の兵士としてここに居るのなら、『王子がいなくて困るのは当たり前だろう』と返すのが妥当なところ。
「そうだな……」
しかし彼にはなぜかそう言えなかった。
「ただいまあ、ログ、ガミー!」
「「おね〜ちゃぁん!!」」
幼い子供らが、帰ってきた彼女を見つけて走り寄ってくる。
「あ、ほら〜。泣かないでいい子に〜って、お姉ちゃん言ったでしょ〜??」
家に入るなり泣きついてきた小角族の二匹の子供らを、娘は優しく頭を撫でてなだめた。
「ゼラ!!」
小さな家の奥から、成人した小角族の女性が出てきた。
「母さん!!」
「お前が連れて行かれて、ログもガミーも泣き止まなかったのよ…良かった、お前が無事で…。お前が森へ行ったとも聞いたから……」
優しい声で心配そうに娘を抱きしめる母親。
「ごめんなさい…。でも大丈夫!あたし平気だよ!王子様は、弟王子様が心配なだけみたい!でもね、あたしじゃ励ませなかった……」
「ゼラ…。…あら?」
母親は戸のそばにいた彼に気づき、娘そっくりの顔で穏やかに笑うと、向かって頭を下げた。
「兵士様…貴方様が私の娘を助けてくださったのですね…?なんとお礼を申し上げたら良いか…」
「…いや……」
彼は気まずくなり、何も言えなくなった。
もちろん顔には出さないが、娘がこうなったのも自分のせい。
「兵士様、客間も無いので申し訳ないのですが、宴の準備が終わるまで、ゆっくり寛いでいてくださいませ。子供達は下がらせますので…」
この母親は怖かったのかもしれない。
娘を差出せといった王子。その城の兵士がいる。娘は王子に何をされたか、まだ言っていない。
内心、何か子供らにされてしまうのではないかと思っていたに違いなかった。
彼は一人になった部屋で周りにわからぬよう見えない霧で自身を包み、勧められた寝床に横になった。
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