小角族の呑気娘

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小角族の呑気娘

 早急とのことで次の日、彼の前に一匹の低魔族が連れられてきた。  小さめな身体に赤い肌、頭から突き出た小さな二本角。どうやら小角族の娘のよう。  粗末な服を身に着けてはいるが、ニコニコと人懐っこい笑顔を絶やさず、幼い頃の第二王子を思い出させた。 「王子様があたしを呼んだって言うので、ここに来ました!」 「…これはまた、頭の悪そうな……」  思わず彼は顔をしかめる。  城にいる周りの皆は、これ以上の怒りを買うわけにはとピリ付いている。  しかしそんな中でこの娘ときたら、空気が読めないのか何か策があるのか、呑気に笑っているだけ。 「ライ王子様、」  その言葉を聞き、周りの者たちは内心、大変焦った。  『ライ』というのは、幼い頃に第二王子が彼を呼んでいたときによく使っていたもの。  彼はその呼び名が嫌いだったらしく、怒りを含みながら、『兄上』とだけ呼ぶよう訂正していたものだった。 「ラインデンドだ…!!」  周りが予想した通り、彼は怒りを隠そうともせず訂正する。 「ら…ライ…?ライ、デン〜……」  相変わらずの呑気さで、娘は彼の名を必死に呼ぼうと練習を始めた。 「もう良い!!」  彼はとうとう痺れを切らし、跪かされている角娘に近づき、見下しながら言う。 「なぜ連れてこられたか…まぁ、頭の悪い低魔族のお前では分かるまい…」 「あたし、王子様の『おあいて』をするように、って!」  周りはざわつき、当の王子は片眉が上がる。 「ギダ様が、あたしを心配して泣きながら見送ってくれました!だからちゃんと言ってきたんです、ちゃんと頑張ります、って!」  ギダというのは、とても小さい集落を作る小角族の族長の名。  無理もない。  本気で怒らせれば何をするか分からないと言われている王子に、家族同然の娘を差し出す羽目になったのだから。  にも関わらず、娘はまだ絶やさず笑っている。 「ほう…覚悟もあるのか?それとも快楽を期待しているのか?馬鹿な娘だ、それだけで済むと思うか…」 「王子様に従いなさい、って!頑張りますっ!」  娘は胸を張りそう言った。
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