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「え〜と、王子様はマジメでキリッとしててステキだし、魔力が強いからこの世界のみんなを守ってくれているし、居なくなった弟王子様を心配して、すごく優しい方だと思いました!!…あれ?あたし変なこと言ったのかな??」
「…なんなんだ、この娘は……」
実際のところ、彼は高貴な者たちの相手ばかりしていたため、この娘のような無邪気なタイプは、他人では初めてだった。
ただ一人いたとすれば、彼の居なくなった弟だけ。
『ライ兄貴はスゴイな〜…!』
弟が、幼い頃は彼女と同じように、尊敬するような顔で自分を見つめていたのを思い出した。
「っ…!!」
彼は何とも言えなくなり、娘を置き去りにしたまま何も言わずに部屋を去った。
しばらくして頭が少々冷え、娘の様子を直に見るため戻ってくると、部屋の中からは呑気な声で歌が聞こえた。
「のんびりでいいんだよ〜きっと大丈夫〜仲良くいれるよ〜蒼い月(夜)の時も〜紅い月(昼)の時も〜ずっと一緒にいれば〜…♪」
彼が戸を開けると娘は笑顔になり、すぐにペコリと頭を下げた。
「おかえりなさい、王子様!」
「…この城に来て、よくもこのようなところでそのように歌っていられるものだ」
彼は呆れて言う。
「??王子様は、歌はお嫌いですか??」
また娘の呑気な言葉を聞いて、彼はムキになった。
「そのような事を言っているのではない!慰み者として城に連行されたというのに、お前はよくもそうしていられるものだと言っているんだ!!」
「…あたしを心配してくれているんですか??大丈夫です、体力は少しある方なんです!」
娘は真面目な顔でそう返す。
「心配などしていない!!誰が下等なお前のことなど!」
「だって、あたしにそんな顔で声をかけてくれたってことは、連れてきてクタクタになってないかな、ってことで心配してそれで……」
とうとう頭に来た彼は、当初の目的であった、弟が去った苛つきを早くこの娘の身体で解消し、見下してやろうと思った。
「うるさい!!さっさと事を済ませて追い出してやる!」
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