第1章

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「春香さん。お祭りに行きましょう」  何の脈絡もなく、唐突にそう言われた。  金髪の長い髪を緩く巻いて私と同じ制服に身を包んだ彼女はにっこり笑う。  美穂さんは、日本人の父親とアメリカ人の母親の間に産まれたハーフだ。髪の色は母親から受け継いだものだけど、どちらかといえば日本人の顔立ちだ。もちろん誰もが目を留める美人。  そんな彼女が紙袋に入っていた綺麗に畳まれた花柄模様の浴衣を2枚差し出した。 「色違いの同じ柄ですのよ。お揃いですの。どちらかをお選びくださいませ、春香さん。大親友ですもの! オーホッホッホ!!」 「あ、今日はちょっと……」  あのお方がテレビに出る。リアルタイムで観たい! もちろん録画はするけど。  目の前のお蝶々夫人のような美穂さんは私が浴衣を決めるのを待っている。  どうしよう。
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