第1章

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 鬼の話によると、ある特殊な人間にはオニダマという魂が宿るという。  オニダマが宿るのは、前世でオニダマが喰えずに生き絶えた鬼だという。  普通の人間に戻るには、オニダマを純粋な鬼に取り出してもらうしかない。  鬼が生きていくためにも、オニダマの摂取は必要だという。 「ちょっと待って!! 何でそれ早く言ってくれないの!?」  安心した。でも。  命がけで逃げてた私って……。徐々に怒りがこみ上げた。  鬼はきょとんとした顔をする。 「お前。話そうとするといつも逃げるじゃないか」 「そ、そんなおっかない顔で! 刀抜いて持ってくりゃ! 誰だって逃げるだわよ!!」  鬼は一瞬空を見上げ、 「オッカナイ?」 「怖いって意味よ!」  私がそう言うと鬼はうれしそうな笑みを浮かべた。 「“怖い”は鬼にとって最高のほめ言葉だ」  ドキッとした。
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