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な、何だろ……。今の鼓動。
顔を上げて鬼を見る。
私の様子に一瞬たりとも気づかない。
この鬼が能天気なのか、他の鬼も同じなのかは知らないけど。
「しょ、しょうがないな……。どうやったらオニダマを抜けるの? さっき失礼にも谷間を触ってたけど」
「オニダマは鬼に変身しないと抜けないようだ」
「何で?」
「鬼の鬼脈を感じ取れないからだ。俺の考えじゃ、この世界の何かが原因だな。まあ、それはいいとして。この世界から脱出しよう」
「う、うん」
私の返事を確認した鬼は近くの木へ近寄った。
鬼はいつも通りという感じでなんなく右手を光らせた。
「何するの?」
「ここがどこかわからない。この世界の住人に聞いてみる」
と言って、光った右手を木の中へ。すーと入っていく。
「これがホントの“鬼の手”……」
木の色が落ちた。くすんだと言った方が近いかな。
って、鬼の手を見て驚いた。小さな人間が。
「これって……よ、妖精?」
初めて見た。そりゃそうだ。深緑の髪に色白の肌。大きな透明の2枚の羽。口をパクパク動かしている。
かわいい。
「でも……。ぐったりしてるね」
妖精は今にも死にかけそうだった。
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