第1章

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 な、何だろ……。今の鼓動。  顔を上げて鬼を見る。  私の様子に一瞬たりとも気づかない。  この鬼が能天気なのか、他の鬼も同じなのかは知らないけど。 「しょ、しょうがないな……。どうやったらオニダマを抜けるの? さっき失礼にも谷間を触ってたけど」 「オニダマは鬼に変身しないと抜けないようだ」 「何で?」 「鬼の鬼脈を感じ取れないからだ。俺の考えじゃ、この世界の何かが原因だな。まあ、それはいいとして。この世界から脱出しよう」 「う、うん」  私の返事を確認した鬼は近くの木へ近寄った。  鬼はいつも通りという感じでなんなく右手を光らせた。 「何するの?」 「ここがどこかわからない。この世界の住人に聞いてみる」  と言って、光った右手を木の中へ。すーと入っていく。 「これがホントの“鬼の手”……」  木の色が落ちた。くすんだと言った方が近いかな。  って、鬼の手を見て驚いた。小さな人間が。 「これって……よ、妖精?」  初めて見た。そりゃそうだ。深緑の髪に色白の肌。大きな透明の2枚の羽。口をパクパク動かしている。  かわいい。 「でも……。ぐったりしてるね」  妖精は今にも死にかけそうだった。 .
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