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子供の頃、ずっと不思議に思っていたことがあった。
それは、母の手作りご飯のこと。
料理上手な母は、毎日毎日、私達家族のためにいろいろな料理を作ってテーブルに並べてくれた。
そのどれもが美味しかったけれど、ときどき、違う味になることがあったのだ。
同じメニューなのに、いつもと違う………?
たまに訪れるその違和感は、私が小学校の高学年になるまで謎のままだった。
けれどある日、父が母にある贈り物をしたのを見て、私はその謎が解けたのだ。
父が母に贈ったのは、真っ白な、大きなお皿だった。
デリバリーのピザをテイクアウト用の箱のまま食べるのは味気ないと言った母に、父が会社帰りにデパートに寄って買って帰ったのだ。
そしてその次の日、早速ピザを頼んでそのお皿に乗せると、なんだか、いつもより美味しくなった気がした。
お皿に移し替える、
たったそれだけなのに、こんなに味が変わって感じるのかと、まだ子供だった私は、まるで魔法を目の当たりにしたような気分になったのを覚えている。
そしてそのときから、
私も大人になったらこんな風に誰かのご飯をもっと美味しくさせるお皿を作りたい。
そう思うようになったのだった…………
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