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「幸はまだ、どこかオレに遠慮してるだろ?付き合いだしてからまだそんなに経ってないからとか、幸は真面目だし年齢的にも恋愛経験はあまり多くはなさそうだからとか、あれこれ理由づけては気にしないようにしてたけど、本当は、どこかで、幸がオレとの関係に消極的なことが気になって仕方なかった。オレが強引に言い寄ったせいで、幸は無理してるんじゃないか…ってね。そう考えたら、もしかしたらいつか幸がオレから離れていくんじゃないかって、不安になることもあったよ。オレだって、自信なんかないんだよ」
こんないい大人が、笑えるだろ?
今里さんは顔だけをこちらに向かせて、自嘲した。
でも私は、そんな力なく笑みを浮かべる今里さんにも、ドキリとしてしまう。
だって、例え弱気な姿でも、今里さんの本心を見せてもらえて嬉しかったから。
自信がないなんて素振り、おくびにも出してなかったのに、内心ではそんな風に思っていただなんて……
その不安の裏に、私への想いの深さを見つけた気がして、胸が、熱くなる。
そして、私はやっと思い知るのだ。
自信がないと臆病になるのは、それだけ、真剣だからということに。
真剣に相手を想うからこそ、自信が持てないこともあるし、不安に陥ってしまうのだと。
つまり、私の心に居座っていた弱気の正体は、今里さんへの想いで、
今里さんの心の吐露は、そのまま私への告白だということを……
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