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……そろそろ、”自信を持てない私” を、崩していかなければならない頃かもしれない。
自分は今里さんとは不釣り合いだから、
私はまだまだ新人で、恋愛に現をぬかしてはいけないから、
そんな言い訳を振りかざして、色々なものから逃げたり後回しにしたりするのは、そろそろ終わりにしなくちゃいけない。
本気で、今里さんへの気持ちを貫くつもりなら。
本気で、今里さんが好きなら。
自分自身に問いかけるまでもなく、そんなの、とっくに答えは出ていた。
「……私、まだ全然頼りないですけど、頑張ります。今里さんの彼女として、自信が持てるように」
今里さんの隣に並ぶ自信はないけれど、
今里さんの隣にいたいから。
私よりその場所が似合う人がいるかもしれないけれど、
私はその場所を誰にも奪われたくないと思っているのだから。
だったら、頑張らなきゃ。
今里さんの隣に立つ自信を、その場所を守れるだけの強さを身に付けなきゃ。
私の決心を悟ってくれたのか、今里さんはものすごく嬉しそうな笑顔を見せてくれた。
「じゃあオレも、幸の彼氏として頑張るよ。それでなくても、若い彼女にオジサン扱いされないように気を付けなきゃな」
「オジサンって、今里さんをオジサン扱いなんてしませんよ。オジサン扱いする人もいないです」
今里さんが冗談を言ったと思った私は、合わせるように軽く返したけれど、
「幸には、こんなに若くて可愛い彼女を持った男の気苦労は分からないよ」
いたって真剣に反論されてしまった。
私はそれに対してまた何か言い返そうとしたのだけど、
唇を開いた瞬間―――――
「あら、噂の二人がこんなところに」
秘書課の顔見知りの先輩が通りかかったのだった。
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