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1ヶ月前
1ヶ月前ー
仕事に出掛けたヨツが地下鉄で起こった事件に巻き込まれて命を落とした。予期せず起こった事を受け入れられないまま警察署に出向いた。
雲1つない青空の日に起こった事件に生存者は1人もいなかった。
「ヘインズさん、こちらへ。」
警察官に案内されて遺体確認でヨツに会った。爛々とした黒い目、目玉焼きを焼いてた手、遅刻しそうになり慌てている姿。
血の通っていた肌色は、青白い色になって冷たいストレッチャーに横たわっていた。
確認を終えると、状況説明や遺体の引取確認などで流れるように時間が過ぎた。
「話は以上です。」
日が暮れてきた頃に署から解放されて車に乗り込んだ。
車を走らせている間、ずっと彼女のことを考えていた。好き嫌いがない食欲旺盛なところや初対面時に着ていた服や天気を覚えてる記憶力の良さ、本を読んでいる時にコロコロ変わる表情。
もう見れないんだな…。
□
気がついたら自宅のマンション駐車場まで来ていた。どうやって帰ってきたか覚えていない。
今は妻の事しか考えられない。
気を取り直して駐車しようとしたが、急停止させた。
駐車場の縁石に白いコートを着た小さな子供が蹲っていた。親は何をしている?こんな所で1人にするなんて危険すぎる。
車を邪魔にならない所に停車させ降りた。ドアの音に気づいたらしく子供が肩を揺らして此方を見た。
私はその姿を見て驚いた。ヨツに似た爛々とした黒目とフラックス色の髪と白い肌をした私に似ている子供だった。
「…似てる。」
あまりにも特徴が似ていたので呟いてしまった。自分達に子供がいたらこんな雰囲気なんだろうと思った。
感心をしつつ、周囲を見渡し保護者を探してみたが駐車場には誰もいなかった。
迷子になったのだろう。近づくと子供が足元にしがみついてきた。
『………。』
「こんな所でどうしたんだ?はぐれたのか?」
『オトさん。』
私の顔を見ながらはっきりと答えた。
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