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次に起きた時はすっかり日は落ちて、窓に室内の様子がうっすら反射していた。んん、まだちょっと頭フラフラするけどだいぶまともになってきた。隣を見るとソウタさんが椅子に座ったままベッドの端にうつ伏せて寝ていた。ずっと一緒にいてくれたのかな。ソウタさんのベッドだしこんな広いんだから一緒に寝ればいいのに。あれ? でもソウタさんは俺の貞操をねらってるのか。じゃあダメ。
ふと時計を見ると9時半。……えっ9時半!?
「ソウタさん起きて! ライブ始まってる!!」
「ん……」
唇をむにゃむにゃさせながらソウタさんが眠そうに起き上がる。
「ソウタさんライブ!!」
「んんっと。あぁ、今日は休み連絡いれたから大丈夫」
「えっなんで?」
「ヒロほっとけないし、ヒロの方が大事だから」
……。俺のためにライブ休んだの?
「お腹空いてるよね? お粥作っといたから待って」
カチリとコンロに熱が入るとともにいい香りが広がって、茶碗にアサツキが散らされる。そういえば昨日の夜から何も食べてなかった。急にすごくお腹が空いてきた。
ほっとする味。茶粥っていうのかな。美味しい。
「顔色が良くなった。ちょっと元気になったみたい。よかった」
「ソウタさんのご飯は?」
「さっき作って食べたから大丈夫、ほんとごめんね」
恐る恐る額に触る手の感触が冷たい。
「今日泊まってく? ええと、もう何もしないから。俺はソファの方で寝る」
「なんかごめんなさい」
「うん?」
「1日潰させてライブまで休ませちゃって」
ソウタさんのちょっとはにかんだような口元から白い歯が見える。
「変な人だね、俺のせいなのに。俺もヒロの1日を潰した。じゃあお互い様ってことで」
「うん。あとその、ここで寝てていい」
「うん?」
「近くにいないと歯が見えない」
「……ほんとぶれないね」
「歯を見にきたんだから目隠しされるのはおかしい」
ふふっと笑って優しく頭が撫でられる。いつもみたいに頭蓋骨の形を探るような感じじゃなくてふんわりした感じで。
布団に入ってきて隣に寝転ぶ。
そっと抱き寄せられる。
「よかった、嫌われてなくて。ほんと大好き」
「変なことはしないでね?」
「大丈夫、もう一生分くらい齧った気がするから俺今賢者。歯好きにしてていいからね?」
なんか自然に腕枕された。とりあえず顔を近づけて歯を舐める。さっき気になったことを聞く。
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