うすぐもり

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「それと、解答用紙の字が汚い人が相変わらずいます!さっさと書きたい気持ちはわかりますが、せめて読める字を書いてくださいよ」 中学のときの先生も、同じようなことで文句を言っていた。 あのときは「ああ、どうせ男子が雑に書いたんだろうな」と思っていた。しかしこの高校になると、少し感想が変わってくる。 ここは、女子校だ。 まあまあ偏差値が高く、なかなかに歴史がある女子大の附属の高校。私は高校から入ったけれど、人によっては小学生のときからこの学校だ。 内申も足りているしアクセスも悪くない、ということで推薦で受けて、無事に合格した。 「字が綺麗か綺麗じゃないかだけで、人の印象って変わりますよ。本当みなさん、素敵な女性像というのはですね……。コラそこ、言ったそばからカーラーを巻かない!」 「えー、バズちゃんのケチー」 女子校というのは、こんなもんである。 品がない。 伝統ある女子校の生徒イコールお嬢様、というわけではない。それぞれの家庭の質や金銭的な面だけ見ればお嬢様かもしれないけれど、中身は全くお嬢様じゃないのだ。 私も別に上品ではないので、人のことは言えない。周りが思っているほど、真面目でもないし。 ちなみに先生のあだ名のバズというのは、英語のbuzz reading(バズリーディング)から来ている。 皆がいっせいに、ブツブツと読み上げていくバズリーディング。それぞれのペースで読み上げていくので、まとまりはなくて独特のうるささがある。 あの先生は一人でもバズリーディングのようにやかましく口が回る、ということでバズ。かれこれ十年ほどバズと呼ばれているようで、本人も半ば諦めている。なんて不名誉なあだ名だろう。
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