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もちろん、女子校ならではのいいところもある。
男子がいない分、変に自分を飾ろうとせず、ありのままの自分を出せることとかまさにそうだ。
自分の好きなことに全力投球している人が多い。
部活とか、趣味とか。あと推しとか。
推しがいる人は大変多い。というかいない方が珍しいかもしれない。
キャピキャピした女子が、少年漫画のBLカップリングを推していたり(私は高校に入って初めて、BLの攻めと受けという概念を知ってしまった。無念)。
大人しいと思っていた女子が、隣のクラスのイケメンに熱を上げていたり(もちろん相手は女子。女子校こわい)。
彼氏がいる人はごく少数で、四十人いるクラスの中で一人いるかいないかくらいだ。
残念ながら、私は推しも恋人もいない。
「夏休みが終わって秋になれば、もう高校生活も折り返しですよ。もっと気を引き締めたらどうですか?いくら内部進学で受験が無いからって……」
本当にこの先生は、一人でバズリーディングなみにやかましい。
先生の話し声にかき消されながらも、カチカチカチカチと連続した音がする。斜め前の戸田さんがひたすらにスクショを撮っていた。
画面に目を凝らしてみると、赤髪の人がずっとアップになっている。なるほど、ソロ曲か。
作業用BGMなみに途切れない文句をほどほどに聞き流しながら、たしかに字の綺麗さは大切だよな、と思う。
リュックの中に入っている、一枚の履歴書に思いをはせた。
私が今日これを持っているのは、あの張り紙の字が綺麗だったからだ。あと、右端に描かれたカメのイラストがかわいかったから。
佳境に入ってきたバズの女性論は、遠慮なく響くチャイムが無事に終わらせてくれた。
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