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転移の間は小さな部屋で遠距離移動などに使われている。
よく分からない相手にうろつかれるのが嫌だったので俺が転移の間へ行くことにしたのだが
いつもは静かな西の建物がかなり騒々しい。
俺が顔をしかめたのは遠く離れたこの場所まで聞こえる男の泣きじゃくる声のせいだ。
「…ぼ、僕…騙されたんです、、ひっく、、悪いドラゴンが、無知な僕に…」と鼻をすするような音とともに聞こえてくる
「ゆ、ユンファさんに、、ひっく、、あ、会わせて…、会えないと、ぼ、僕はッ……」と部屋の見張りをしていたであろう竜人の足元の服にすがりつき泣き崩れてる姿と服をつかまれてる無表情の竜人が部屋の入口に来た俺と足元のそれを交互に見て何とかしてほしいと無言で訴えていた。
入口が1つしかない窓もない広さもない狭い場所に俺と俺の護衛、見張りとすがりつくそれがいるのだがこの近さで俺に気づかずに「ユンファさんに会いたい」と俺の目の前で泣いて頼んでいるのがおかしい。
そもそも泣いて頼む竜人などはじめて見た。
会いたいのならば竜貨で決めればいいはずである。
「おい、ユンファに会ってお前は何をするつもりだ」と俺が声をかければ
それが泣きはらした酷い顔ですがるように俺を見上げて
「こ、コインゲーム」と俺に言う。
やはりと言うべきかこいつはユンファの顔を知らないようだ
「コインゲーム?」と俺が首をかしげれば
それが服から出した竜貨を見せて
「こ、これ!…コレで勝たなければ、、ぼ、僕はユンファさんの、こ、婚約者らしくてッ、断れば死ぬ、ってッ!!」と俺に必死に訴える
「誰がお前にそう言った?」と俺が聞けば
「よ、ヨンファ!く、黒色の、ひっく、、悪い、ドラゴン」
俺の顔が引きつる。
―――…糞ジジィ。
楽し気に高らかに笑っているジジィの姿が俺の頭にうかんだのだった。
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