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「ユンファさま、西の客人がァ…!」
騒々しい声は念話として頭に響き書類を読んでいた手をとめてユンファはまたかと思う。
「……こんどは何だ」
ユンファも言葉にすることなく返事をすれば
「その、西の客人が風呂場で凍えてます…」
アイツが来てから1日とたってないのに意味不明な報告があたりまえのようにされ続けられている。
もちろん西の客人とはあれのことだ。
竜貨の決定にそのまま西にあった客室へ案内をして護衛と世話係を1人づつ見張りも兼ねてあれにつけていた
いちいち連絡に来られるのも面倒だから念話での報告にさせたのだが…
風呂の水は冷たいものだ。
魔法でお湯にすればいいのに凍えてるってことはそのまま入ったのか?
魔法が使えない竜人なんているのか?
ごく稀にそうゆう個体が生まれることがあるらしいとは知っているが
あれがそうだとでもいうのか…
あるいは別の理由で魔法が使えないか
あの歳で竜体になれない、竜貨のルールも知らない、念話もできない、体力もない
(西の客室に行くだけで力尽きて部屋に入った後しばらく座りこんでいたと世話係が報告してきたし)
俺の直感はあたっていて弱そうな竜人は本当に弱かった
竜にとって望ましい伴侶とは強さであるにもかかわらず
俺の婚約者は控えめに言っても竜族・竜人族のなかでも最弱の部類であろう
今までどうやって生きてきた?!というほどの知識のなさ日常生活能力の低さにめまいがする
竜としての警戒心のなさは致命的ではないだろうか?
出された食べ物を疑いもせず食べたという報告もある
まぁ、俺たちは耐性を多くもってるし猛毒も効果がない体質だけど
酒に酔う個体はいるし野生の動物だって食べるものにはもっと注意深いぞ
「ユ、ユンファ様…西の客人が鏡を指さして誰これぇええ…と叫んでおります…」
疲れと呆れがまざった声で報告され
「……………………叫ばせておけ 」と俺は念話を終了したのだった。
今まで自分の姿を見たことがないとでも言うつもりか!?
何から教えればいいのか考えるより幼児教育からやり直すか?
あぁ、ついでに俺にとって都合のいい婚約者となるように俺が直接あれに教えることにしよう
多少の常識を捻じ曲げたところであれには分からぬだろうし
俺に逆らうことなく従順に躾けるのもよかろう
ユンファは西の客室へと歩き出したのだった。
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