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 愛されたくない。愛されたくない。愛されたくない。  俺は愛なんて、そんな汚い感情、受け付けられない。  この体が愛で満たされるなんて、嫌だ。おぞ気がはしる。鳥肌が立つ、  想像しただけでも涙がこぼれて、吐き気がとまらない。  だって、愛があったから、僕の両親はお互い浮気しあった。  再婚の邪魔になる僕を捨てたんだ。  愛があったから、僕の彼女だった人は他の男を愛したのだから。  彼女は愛した分だけ、僕を憎んだ。  最初から愛なんてなければ、そもそも苦しまなかったのに。    今の俺がこんな事にならずにすんだのに。 「ブヒぃっ、ブヒぃっ」  愛さたい。愛されたい。愛されたい。  あの人に、どうしても愛されたい。  愛して、愛して、愛しつくされたい。  私だけをその瞳に入れて、私だけに話しかけて、私だけに触れて。  私は愛されるために、惚れ薬を作る事にした。  私は魔女。  しかも天才の魔女。  だから、頑張ればどんな薬だって作れる。  でも、どんな優れた薬も、材料が無ければ作れない。  天才だとしても、無から唐突に有を作り出すことができないのだ。  私は、惚れ薬をつくらうために材料を探すことにした。  寒気がした。  愛が呼んでいる。  愛がやってこようとしている。  愛が僕を求めている。  なぜ? どうして。  要らない人のもとに愛なんかがやってくるんだよ。  僕はその愛を拒絶した。  でも愛は無敵だった。  愛は不適だった。  愛は大胆だった。  愛は強大だった。  逃げても逃げても、愛は追いかけてくる。  やっと材料を手に入れた。  この薬があれば、きっと誰もが私を愛してくれるはず。  あの彼も、私を愛してくれるはず。  かつて捨てたことがあったけど、そんな小さなこと、水に流してくれるはずわよね?  やっぱり彼が一番だったのよ。  彼こそが私を愛してくれる存在。  愛を知らないで育ったわけありの彼なら、他の人も近づこうとしない。  だから、絶対浮気なんてしない、誰かに新たに惚れ薬をかがされる事もない。  私には、そんな彼が必要なの。  だから、彼を手に入れるために、この捕まえた材料を早く薬にしてしまわないと。 「ブヒぃっ、ブヒぃっ、ブヒぃ!」  ぐつぐつぐつぐつ。 「ブヒぃぃぃっ!」  できた。  さて、彼に会いにいきましょう。  そういえば最後、彼と別れた時の私は何をしたんだったかしら。  あの時の彼が必死に私をひきとめようとしてたから、あまりにもその姿が滑稽すぎて、聞くに堪えない彼の言葉を耳にしたくないとおもったの。だから、別れ際に何か魔法を使ったのよね。  私の目の前には、きれいな液体で満たされた小瓶。  さあ、彼に会いにいかなくっちゃ。
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