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 行く当てのなかった俺は、町をさまよう中で、孤児院に拾われた。  俺は才能ある家の人間だったから、誕生日が来るまでは彼らの事を……才能がないゆえに貧しい暮らしをしている者達を、いつも馬鹿にしていた。  それにもかかわらず、孤児院の者達は俺を受け入れてくれたのだった。  だから、俺はその日から心を入れ替えて過ごす事にした。  才能がある者も、無いとされている者も、同じ人間。  そう考えるようになった。  彼らの優しさに耐えかねて、孤児院を飛び出した夜もあったが、誰かが必ず探しに来てくれた。  才能がなくても、ここにいていいのだと理解できた日に、俺は人生で初めて泣いた。
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