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孤児院の生活に慣れた頃、小さな子供達が、ゴミ捨て場に捨てられていた水晶を拾ってきた。
たぶん価値を知らずに偶然持ってきたのだろう。
ぞんざいに紙につつんで、他の戦利品と共に持ち帰ってきたからだ。
それを誰が捨てたのかは知らないが、才能がないゆえに孤児院に集まった俺達にとっては無用の長物だった。
だからみんなの意見は自然と、売り払ってお金に変えようという事になった。
しかし、その水晶を俺が持った時、思わぬ変化が生じた。
水晶が示したのだ。
何の才能もないはずの俺に、何かの才能があるという事を。
俺が持っている才能は、捕食。
才能は七歳の時に授かるのが一般的だが、たまに成長してから授かる事があるという、そういうのは神様に成長を認めてもらえた証なのだと言われていた。
その成長してから判明した才能。内容は、食らった物を自分の力に変える才能だった。
食べ物や無機物、魔物などを食らうと、自分の力にできるらしい。
けれど、俺はその力を誰にも言わなかった。
力を手にした事によって、孤児院で得たものが失われる事が怖かったからだ。
俺にとっては、富を得る事よりも、権力を握る事よりも、今の暮らしが続く事が大切だったからだ。
それからは、何事もなく日々を過ごしていた。
売り払った水晶のお金は、とうに孤児院の補修や備品の購入にあてられていた。
そんな中、ある事件が起こる。
魔物の軍勢が俺達のいる町を襲ってきたのだった。
俺達は慌てて、町から逃げ出そうとした。
けれど、気付いた時には魔物の包囲網がぶ厚くなっていて、人間一人すら逃げ出せない状態になっていた。
何の備えもなく、魔物に囲まれた町の人達は、死を待つのみだった。
個人の者達も運命を共にするはずだった。
俺が何もしなければ……。
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