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 そんな俺は、すくすくと育って成人の年齢に達した。  大人になった証であるとされる、国特有の儀式をすませ、神職の人間に祝福の言葉をもらった。  立派に育った俺に、孤児院の者達も祝いの言葉を手紙につづってくれた。  俺は誇らしい気持ちでいっぱいになった。  けれど、ある日孤児院の者達が、とある国の者達にさらわれてしまった。  その国は敵対している国だった。  俺の力を無理やり利用したいがゆえの暴挙らしい。  すぐさま駆け付けたけれど、孤児院の者達は亡くなってしまっていた。  俺は復讐心にかられて、その事件に関わった犯罪者たちを根絶やしにした。  俺に情報をくれた国王が、必要ならばその国を滅ぼしてもかまわないと言われていたが、関係のない者達を殺すのには抵抗があった。  俺は才能を得て、様々な物を手に入れた。  権力に富、人脈。  優れた道具、珍しい宝石なども。  けれど、一番大切だったものはなくなってしまった。  成り上がった俺は落ちぶれて、荒んだ暮らしを送るようになった。  人々からは、堕ちた天才と言われるまでになった。
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