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ネズミの棲むマンション
「今日の最後のマンションは小さいなぁ。ちゃっちゃと終わらせちゃおうぜ」
トランクから荷物を運び出しながら先輩がそう言ったので、そうっすねー。と答えて先輩に続きマンションのエントランスに入った。インターネット回線が物理的にマンションに導入できるかどうかの下見調査だし、この規模のマンションなら1時間もあれば終わるだろう。
「じゃ、俺は先に上の階から見るから、お前は集線盤から見といて。管理人室の中にあるから」
今日の先輩は早く帰りたいモードがすごい、いつもの数倍テキパキしている。まぁ俺だって早く帰りたいからちょうどいいんだが。
集線盤と図面を見終え、2階の配管を確認する必要がありそうなので階段で2階へ向かった。綺麗に手入れはされてるけど、建てられてから20年くらい経ってるから無事に導入できるかは微妙だなぁ。
2階の配管に長めのスチール線をゴリゴリ突っ込んで通線できるか確認していると、小さな声で話しかけられた。
「もしもし、そこのお兄さん、ちょっとそれ、やめてくれない?」
脚立の上からあたりを見回しても誰もいないので、またゴリゴリとスチールを配管の中に突っ込みまくる。
「ちょっとちょっと、聴こえてたでしょ?それやめてくんない?」
気づかないふりをしていたけど、声の主は配管のすぐそばにいた。俺の手のひらに乗るくらいの大きさのネズミだ。
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