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「なんでやめなきゃいけないのさ」と引き続きスチールを配管の中に送りながら尋ねてみる。
「だってそれ、またインターネットか電気の線を配管の中に入れようとしてるんでしょ?これ以上いろんな線を入れられたら僕らの住む場所が無くなっちゃうのよ」
と、マンションの居候が言うので「まだ調査だからわかんないよ」と適当にあしらってみた。
「ダメダメ、このマンションはいろんな線が配管に入ってるからもういっぱいなんだ、だから新しい線は何も入らないよ」と、目をすばしっこく泳がせながらネズミは言う。
「今回は光配線の調査依頼だから、2ミリくらいの隙間があれば充分なんだよ。見た感じそれくらいの余裕はありそうだよ」と教えてあげるとネズミは、ぬぅぅ、と尻尾を少し振りながら俯いた。ネズミの生態には詳しくないので、怒っているのか悲しんでいるのかよくわからなかった。なんとなく可哀想なので、ポケットに入ってたクッキーを1個あげた。
「わ、ありがとう。優しいんだね」と、ポリポリ食べながらネズミは礼を言った。
「どれくらいの間このマンションに住んでいるの?」
ネズミと話せる機会もなかなか無いなぁと思い、スチールを配管の中に送りながら質問してみた。
「んー、5年くらいかなぁ」
ポリポリと音をたてながらネズミが答えてくれた。
それからネズミはいろんなことを教えてくれた。このマンションには2つのネズミの家族が住んでること、嫁ネズミと子ネズミ2匹と両親と生活していること、マンション内の移動は主に配管の中を使用していること、両親が老いてきて介護が必要になってきたこと、嫁ネズミにも働きに出てもらっていること、あまり派手に生活すると駆除業者を呼ばれてしまうから慎ましく生活していること…。
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