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変革2
コツ…コツ…コツ…
一定のテンポで歩く女はこちらをチラリと見て近づいて来る…
女「そこ…いいですか?」
ケンジ「………?」
女が指さした先は俺の隣の席…
ではなく俺の席だった。
ケンジ「ここに座りたいんですか?」
女「はい…」
何かの拘りなのか?オカルトチックな匂いがした俺はその理解出来ない恐怖からか…席を静かに譲った。
女「ありがとうございます…」
ケンジ「………」
女との距離を取り無言でコーヒーを飲む。
ケンジ(これは流石に声をかけずらい…)
あれから帰ってくる気配の無いトウマの事を考えつつ意識を変える為の言葉も出てこない…
すると意外にも女の方から声をかけてきた
女「あの…やっぱりいきなり席を譲れと言われて…不快ですよね…ごめんなさい」
ケンジ「あ…いや…大丈夫ですよ」
女「良かった…ここへはよく来るんですか?」
ケンジ「実はツレに付いて来ただけなんですよ…」
女「そうなんですか…」
相手の出方を見ながらぎこちない会話を暫く続けお互い軽い自己紹介をした。
女はヨウコと言い彼女もここへ来たのは数える程だった。
ヨウコ「あの…次はいつ来るんですか?」
ケンジ「特には決めてないんですけど…」
第一印象とは違い積極的に話をしてくる彼女に少し驚いている自分がいた。
ケンジ「この曜日は固定の休みなんでまた来ますよ」
ヨウコ「では…私もその日にまた来ます」
彼女はコーヒーカップをマスターに渡しスっと席を立ち扉に向かう。
コツ…コツ…コツ…
ギ…ギ…ギギギッ!!ギィィィ!!
扉を不器用に開ける彼女を席に着きながら見守り俺も最後の一口を飲み干した…。
マスター「お代わりは如何ですか?」
ケンジ「いえ…俺もこれで帰ります」
「ご馳走様でした…」
マスター「お気を付けて…」
店を出てトウマの事は気にせずそのまま帰宅し俺は自室のリビングで体を広げくつろいでいた。
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