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どこで飲もうか、という話になって発覚した驚きの事実。
志摩は居酒屋に行った事がないというのだ。
仕事で行くのは高級料亭だしプライベートでは一切そういった場所へは行かないそうだ。
どこぞの御曹司と同じかよっと多岐を思い出し、同時に日下の事も思い出し少し切なくなる。
気分転換に誘いにのったのに、これじゃあ逆効果だ。
志摩に気づかれないようにこっそり溜め息をついた。
結局、目についた居酒屋に適当に入る事にした。
店内は混みあっておりカウンター席に二人で並んで座った。
志摩を見ると無表情でメニューを眺めていた。
見た目は綺麗だけど何考えてるかわかんねぇな。
「何にしますか?俺は生ビールとからあげと…」
「では、私も三木と同じ物で」
俺は店員を呼びビールとからあげと適当なつまみになる物を注文をした。
すぐにビールが運ばれてきて、いつもの癖で「カンパーイ」とジョッキを持ち上げる。
志摩は1テンポ遅れて無表情でジョッキを持ち上げ、カチンと鳴らした。
いつもの日下とのやりとりと違う事に少し戸惑ったがそれを飲み下すかのようにぐびぐびといっきにビールを飲み干した。
「ぷは―――っ仕事帰りの一杯は格別ですねー!」
わざと明るい口調で言う。今日は楽しく飲みたいのだ。
志摩はそんな俺の様子を見て、同じようにいっきに飲み干した。
「お、志摩さんもいける口ですか?今日はとことん飲みましょうよ」
「ああ」
「志摩さん、今日はどうして誘ってくれたんですか?」
アルコールも入りほろ酔い気分になったので、次の飲み物を注文しつつ気になっていた事を訊いてみた。
「………お前が、寂しそうな顔してたから」
ぼそりと呟いて、来たばかりの新しいビールをまたいっきに飲み干す志摩。
「え…」
志摩の言葉を聞き、俺は固まった。
「大丈夫だ。私以外気づいていない。お前は気持ちを隠すのがうまい」
「…………」
言葉がなかった。
この無表情の上司には全てがバレていたとでも言うのだろうか。
俺が寂しそうな顔をしていた…?
呆然としている俺の頭を志摩はぽんぽんと優しく叩いた。
「!?」
ぎょっとする俺。こういう事をしそうには見えないのに今俺はそれをされていて、おまけに笑顔まで……。
キュン…。
何かが俺の中でささめいた。
「う´、吐く……」
志摩の緊急を知らせる発言に停止していた思考が動きだした。
「わーわー、トイレ行きましょう!」
俺は慌てて志摩を支えトイレへと連れて行った。
志摩は吐き気はあるもののなかなか吐けない様子で辛そうだ。
「うぅ……」
「ふむ。志摩さん、ちょっとすみません。噛まないでくださいね?」
ぐっと志摩の口の中に自分の指を突っ込んだ。
これで吐ければいくらか楽になるはず。
指を突っ込まれ志摩は苦しそうに涙を浮かべている。
その姿がひどく淫猥なものに見えた。なまじ美しい顔をしているだけにその破壊力はすさまじかった。
まるで自分のナニを志摩の口の中に突っ込んだような…。
自分の思考に驚いた。
やばい…!
そう思い指を抜こうとするが志摩に手を掴まれ阻止されてしまう。
「志摩さんっ?」
驚き焦り、声が裏返ってしまった。
俺が固まっているのもお構いなしにぺろぺろと俺の指をいやらしく舐め始めた。
「何、してっ?!」
「んふ。おいし…」
見上げる瞳に熱が籠り、腰はいやらしく揺れている。
突然の志摩のエロさに俺の方も臨戦態勢になりつつあった。
やばいと思いつつも脳が沸騰しそうで、志摩の唇に吸い寄せられるように自分の唇を寄せた。
触れ合う唇。初めて味わう志摩の唇はアルコールの味がした。
そう、これは酒のせいだ。
そんな誰に告げるでもない言い訳をし、更に志摩を深く貪った。
「ん……ふぅ。は……ぁ」
志摩の口からは絶えず艶っぽい声が吐息とともに零れる。
アルコールのせいにしても根は一途な俺は、僅かに残った理性がやばい!やめろ!と警鐘を鳴らしてくる。
だけど、分かってはいるのにやめる事ができない。
上気した肌、潤んだ瞳、漏れてしまう声も志摩のエロさを増大させていく。
頭の中は志摩一色になっていく。
志摩の唇をもっと貪りたい。
志摩の肌をもっと触りたい。
志摩を……志摩を………
―――――抱きたい。
志摩の尻に手が伸びた時、それは起こった。
志摩が盛大にリバースしたのだ。
志摩が出した物で俺は顔面からスーツから全て汚れてしまった。
一気に現実に引き戻される俺。
さーっと青ざめる。
当の志摩は吐いてすっきりしたのか俺の腕の中に倒れ込んでそのまま寝てしまった。
ゲ〇まみれの二人。
俺は、やっと我に返りこの惨状に一人途方に暮れた。
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