プロローグ

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待ちに待った12月24日。サプライズで今夜2人で過ごそうと、プレゼントまで用意したのに。 リースとツリーが描かれた緑色の包装紙に包まれたプレゼントを抱きしめるように持ち、私は彼氏の部屋の戸を静かに閉めた。 「…。」 目を閉じると、彼の部屋で見た光景を思い出す。 彼の革靴の隣に見覚えのある親友のお気に入りのハイヒール。 寝室に続く廊下には、脱ぎ捨てられた彼と女性物の服。 そして、衣擦れの音と男女の…。女の声は、やっぱり親友のもので愕然とする。 彼の浮気と親友の裏切りと言う事実を突きつけられて、驚きと怒り、悲しみと嫉妬、嫌悪とかさまざまな感情が渦巻くが、それでも意気地が無い私は、ドラマみたいに浮気現場に乗り込む根性がなくて、結局は逃げるように来た道を引き返した。 中小企業の小企業の事務員で、現在25歳。社交的な親友と真逆で、地味なインドア派の私。彼氏ができるなど、分不相応だったのだろうか? もっと私が美人で社交的なら、彼と親友に裏切られる事もなかったのだろうか? つらつらとマイナスな事を考えながら歩き、気がつくと彼とよく来た公園に足を踏み入れていた。 冬の木々を美しく幻想的に飾る花のイルミネーション。桃色や橙色の繊細な色合いで彩色された電飾は、実際の花びらをミリ単位まで忠実に再現していて、一言で言うなら圧巻。
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