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この時期になると、恋人達の聖地と化す。
そこかしこで楽しげに手を繋ぎ、もしくは腕を組む恋人達。見ているだけで心臓がズキズキとジクジク疼く。
羨ましく、妬ましい。
妬んでも仕方ないとため息を吐き、私はクルリと恋人達に背を向けて歩きだそうとした時だった。
「キャァァ」
聞こえた悲鳴に私は振り返るとそこには、黒のコートに身を包んだ男がサバイバルナイフを振り回していた。
「テメェら全員、ブッ殺してやる!!」
混乱して逃げ惑う人々の中に、勇敢にもサバイバルナイフを持つ男を抑えようとする男性がいるが…。
サバイバルナイフの刃先が男性に向く。
「危ない!!」
条件反射だった。
私は駆け出し、男性を突き飛ばした。その瞬間、背中に焼け付くような痛みが広がり、サバイバルナイフで刺されたのだと理解する。
「うおあぁぁ」
意味の分からない奇声を発したサバイバルナイフの男が逃げる足音を聞きながら、私はその場に崩れるように倒れ痛みをやり過ごそうと息を吐く。
「誰か!早く救急車を呼んでください!!」
男性は真っ青になりながら、声を張り上げ助けを呼ぶ。
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