真珠とルビー

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 神様でさえ抜けない楔を抜く事が出来るのか…?  勝算がないわけでもない。 「人の手で」想いを込めて打ち込まれた楔だ。「人の手」なら抜ける、「人の手」でしか抜けないのではないか、と。  試しに少しだけ力を加えてみると、固く打ち込まれた楔が微かに動いた。  行ける!  縁も所縁もない土地の、テレビの向こうの神社。  しかも、生中継ですらなかったのだ。  時空を超えて繋がった、蛇神様との微かな接触を頼りに作業を進める。  赤錆た鉄の楔は、長年の人々の想いが呪のように絡みついていて、抜ける事を拒んでいるかのようだった。 「ごめんなさい…ごめんなさい…。」  これ以上の苦痛を与えたくはなかったけれど、どうしようもない。蛇神様の身動ぎを感じる度に、謝罪の言葉と涙が溢れ出す。 「…謝るでない。」  そう聞こえたのは、俺の願望だろうか。  視るのも聞くのも苦手だが馬鹿力と勘が取り柄の俺は、視えて聞こえる相方の指示するままに、楔を抜いて行った。  最後の一本に手を掛けた瞬間、俺の勘が警鐘を鳴らした。 「これ!抜いたら…壁が、崩れる?」 「大丈夫!そのまま、続けて。」  相方に目を向けると、いつの間にやら大きな白い蛇を抱えていた。岩壁に張り付けられている蛇より大きい位だ。 「こいつとすり替えるから」 「いいのか?…て言うか、どこから連れて来た?」 「祀られたがってる蛇も、居るって事。」  …ニヤリと笑った相方の顔を見て、それ以上訊くのはやめた…。
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