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そうして俺のマンションにやって来た蛇神様は、30㎝程の可愛らしい姿になっていた。
神社に居られた時には1mを優に超える大蛇に視えたのだけれど、どうやら大きさは自由に変えられるらしい。
具合が悪くて縮んだわけではなくて良かった。
すぐにお名前を教えて下さったのには驚いた。
シラタマヒメ様。
真っ白でモチモチしたお姿に、成る程なぁ…と納得したけれど、多分お菓子じゃなくて宝玉の方なんだろうな。
俺たちは「姫様」とお呼びしている。
姫様は何日間か眠り続けて傷を癒し、すっかり元気になると、ある日ふいっと姿を消した。
そして戻っていらした時には、男の白蛇様を伴っていらっしゃった。
ずっと別れ別れになっていた恋人だそうだ。
コウギョクマル様。
「若様」とお呼びしているけれど、確実に俺たちよりは年上だろう。
姫様は新雪のような、銀の光を纏う白さだが、こちらは微かに金色の輝きを放っておられる。
眼の色も、姫様の明るい赤に対して、深い紅。
響きあうようにお似合いのお二方だ。
「敬うけれども祀らない。」それが俺たちの暗黙のルールだ。
神棚を用意するのではなく、小さな出窓に姫様たちの居場所を作った。姫様ご所望の「ふわふわモフモフの赤い布」を敷き詰めて、卵の形の器をベッド代わりに置いただけだけれど。
しかもプリンの空き容器と、100均のクッションカバーだし…。
特にお供えをするわけでもなく、姫様たちがご自分で俺たちの皿から食事をしたり、晩酌の盃の中で酒風呂を楽しむのにまかせている。
同居人が増えた感じ?
専門家が聞いたら怒り出しそうだが、姫様たちがこの待遇を面白がっているようなので容赦して欲しい。
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