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答えを弾き出す前にトンと顔の横に椎名くんの手が置かれ、ビクッと小さく息を詰めた瞬間、指先で顎を掬われ上向かされた。椎名くんの形の良い目が私の瞳を覗き込んでくる。
なにこれ、もしかしてここで、キスするの?
ぶわっと顔に血が集まり、ぞくっと腰の奥が震えた。
「西野……」
椎名くんの低い囁きが、私の理性をいとも簡単に剥ぎ取ろうとする。
落ち着け私! 大丈夫、椎名くんとは一線超えてるんだもん。キスくらい、別に……。
昂ぶる気持ちを押さえつけようとすればするほどドキドキする。心臓の音が、さっき響いていた靴音と同じくらい大きく聞こえるような。
私は椎名くんを、ただ見つめ返していた。
だって自分から目を閉じたら、強請っているみたいだから。
そんな緊張マックスの私を見つめながら、椎名くんは口の端を持ち上げて極上の意地悪スマイルを披露した。
僅かに蔑むような視線にも、胸なのか腰なのかわからないけれどきゅんきゅん震えるようなこの感覚。
は、恥ずかしい!
私の気持ちになんか、気づかないで!
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