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言えない思い
まだここから出たくないのに。
素肌に触れる、くったりとしたタオルケットの感触を確かめながら体を丸めた。
閉め切った部屋はエアコンが効いているけれど、裸で寝るのはさすがに寒い。それでも肌寒さを全く感じなかったのは、二人分の温もりがあるからか、体温の高い彼のおかげなのか。
「おぃ、鳴ってる……」
聞き慣れた、だるそうな声。
寝起きの声は、起きている時の五割増しの気怠さ具合。
だけど、私はそれが好き。
もうずっと、言えないままだけど。
「……知ってる」
鳴り止まないアラーム音が気に触るようで、彼はタオルケットを頭まで引き上げ壁際に寝返りを打つ。
その背中にぎゅうっと抱きつきたい衝動を全力で振り払い、ベッドヘッドに置いたスマホに左手を伸ばし、アラームを止めた。
「今日って、週休なの?」
甘えた声は出さない。
右腕で体を支え左手はスマホを掴んだまま背を向けている彼に尋ねると、面倒そうな返事が聞こえた。
「んー」
「そう……」
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