処女と手練れ

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 また、ってなに? どういうこと?  椎名くんがなにを言いたいのかわからない。  そもそもこれって、今晩だけ慰めて、ていう意味だったよね? 「西野、痛いばっかだっただろ? 俺とやって痛いだけで終わるの、なんか男の沽券に関わる」  なにそれ……。  椎名くんの言葉に、開いた口がふさがらない。  さっきの質問は、私を気遣ってのものじゃなかったってこと?  百歩譲ってそこは許せる。  けど、椎名くんが気にしてるのは、自分は痛くするだけじゃない、ちゃんと女の子を気持ちよくさせられるって証明したい、ってところ?  そこなの?!  だとしたら椎名くんて……。 「ろくでなし? あ……」  思わず心の声が漏れてしまい慌てた。  けれど、遅かった。 「ぁあ? 誰がろくでなしだよ。そんな男が処女の地味女とわざわざやるか」  低い声で、でもはっきりと言われた言葉にピンと神経が高ぶる。  ひどい。ひどすぎる。  そんなにはっきり言わなくてもいいよね?  しかも誘ったの、椎名くんだよね?!  私の中で、どこかの回線がぷつんと切れたんだと思う。 「……ヒドイ、ろくでなし」  気づいたらもう、心の中の言葉がそのまま出ていた。 「だから! ちゃんといい思いさせてやるっつってんだよ。俺が調教してやるから、他の男とすんじゃねえぞ!」  ガバッと体を起こした椎名くんに、鋭い眼光を向けられる。結局その顔が整っていることも、なんだか癪に障った。 「なにそれ? すっごい自信。ちゃんといい思いさせてもらうの、楽しみにしてます!」  椎名くんと同じように体を起こした私は、そのギラつく瞳を睨み上げ、さっきまで処女だったことも忘れて叩きつけられた挑戦状を受け取った。 「覚悟しとけ処女!」 「もう処女じゃありません!」 「誰が貫通させたと思ってんだよ」 「むぅうー! 最低! 椎名くんの変態!」  こうして私は、椎名くんのセフレとしての第一歩を知らぬ間に踏み出していた。  好きになる人、間違えたかな……。
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