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ただ、その幸せが長く続くことはなかった。
それから紆余曲折あり、【怠惰】の権能を得て人間社会から隔離した今の生活を形成するに至った。
それから約500年が経ち、近くの森に捨てられていた赤子のダインを拾い育て、そして12歳で人間社会へと送り出した。
色々なことを経験してきたアーチェは、もう人間社会というものに関わる気はなかった。
だからこそ、ダイン達の要求など飲むつもりもなかった、のだが彼らは頑なにアーチェの固辞すらも拒んだ。
そしてこの終わることのないように思えた問答に先手を打ったのは、ダインの方であった。
「母上! 私は、貴女にもう一度人間というものを知って欲しいのです! 母上に何があったか、聞き及んでいます。ですが、かつてとは変わったこの国を、貴女にも知ってもらいたい!」
揺るぎのない真剣な目で見つめられたアーチェはダインが本気であることを理解し、溜め息を吐いた。
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