猫の王様 ~EP.1 中井くんと猫の王様の話~

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「だから、それどころじゃなかったんだって」  ルリがぷうっと頬を膨らませる。何これマジで可愛いな。 「もう、九条くんに頼んで直接会わせてもらおうかな」 「あ~……、それは無理じゃね?」 「何で?」 「俺、広瀬さんとちょっと話しただけで、九条にめっちゃ睨まれた」  ルリが大きく目を見開く。うん、びっくりした顔も可愛いんだよな。 「あの九条くんが? マジで?」 「マジで。俺、最後、九条から逃げてきたんだぜ。明日、九条の機嫌が直ってなかったら、あいつ、マジで許さねえ」  ぐっと拳を握り締めた俺を見ると、ルリはふ~んと鼻を鳴らした。 「何だよ?」 「べっつにぃ? ま、九条くんは本当に大丈夫みたいだね」  はっきり言ってルリの判断基準は俺にもよくわからないが、ほとんどの場合当たっているから不思議なものだ。 「でも、喫茶店以外で広瀬さんに会うのは、マジでやめたほうがいい」  俺が真顔で言うと、ルリは何故か堪え切れないように唇を緩ませた。 「ええー、まあ、確かに格好いいよね。すごく」 「いや、っていうか、あの人マジ怖い」 「……何か言われた?」
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