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「ちゃんと、店長が定時で上がらせてくれたから、八時半に終わって、すぐ着替えて、店の外に出て……四十五分くらいに、電話した。昨日は自転車じゃなかったから、帰り道、歩きながら」
「おう」
「それで……電話したら、すぐに広瀬さんが出てくれた。いつもみたいな話し方で……。えっと、その、つまり、喫茶店にいたときの広瀬さんは、全然、俺の知ってる広瀬さんじゃなくて、あの時はそのこともびっくりしちゃって、何も言えなくなっちゃって……でも、電話の声は俺の知ってる、いつもの広瀬さんだったから、少し、ほっとした」
「あのさぁ、それは俺もちょっと引っかかってたんだけど。喫茶店のウェイターはこう、何ていうか、笑顔も喋り方も、全身何処にも隙がないって感じでさぁ。黙って立ってるだけですげー目立つし、めちゃくちゃイケメンだし、イケボだし、残念な要素が一つもなくて、ホント完璧だったじゃん」
「そ、うだね」
少し照れ気味に、九条は同意した。一応、俺はまだ認めてないけど、付き合ってる奴が手放しに褒められたら嬉しいのはわかる。が、何かムカつくな。
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