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「でも、前に話を聞いた感じだと、もっと存在自体が地味っていうか。コミュ障のニートって感じだったじゃん」
「コミュ障のニート……」
「いや、まあ、実際、コミュ障でもニートでもなかったわけだけど……」
俺が慌てて言いかけると、九条は遮るように頷いた。
「確かに、あの時はそうだったみたい、だけど。でも、そうなんだよ。俺が好きになったのは、コミュ障でニートの広瀬さんだったんだ」
「え……」
いいのか? そこ、認めちゃって本当にいいの? 何か、いろいろと人間として大丈夫か?
不安げな俺をよそに、九条は改めて納得したように言った。
「昨日、俺、喫茶店で完璧に格好いい広瀬さん見て、本当にすごいなって思ったんだけど、それ以上に気後れしちゃったっていうか……。全然、俺には手が届かない人で、話しかけたり、まして男の俺が好きになったりしちゃいけないんじゃないかって。でも、それと同時に、俺が好きになった広瀬さんとは別人みたいで、本当にどうしたらいいかわからなくなっちゃって。だから、電話の声がいつもの、俺が知ってる、俺の好きな広瀬さんの喋り方だったから、嬉しかったんだ」
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