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「ちょっ、えええ……」
こうして俺は友人の快諾を得て、初デートに同行することになった。
*
「あ、広瀬さんだ」
放課後。待ち合わせ場所の、大学近くの大きな公園の一角にある広い池の端に着くと、九条はぱっと顔を明るくした。
「え、いや、何処よ?」
近くにあるいくつかのベンチに目をやるが、見つからない。もっと遠くか? きょろきょろしている俺に構わず、九条はててて、と浮かれた足取りで一番近いベンチに駆け寄った。
「広瀬さん! すみません。待ちましたか?」
いやいや、そいつは違うだろ、と俺が思った瞬間。まるで急に日が差したかのように、そいつの存在が明るく照らし出された。さっきまでシルエットしかないモブみたいな存在だったのが、いきなり特大の羽根飾りを背負って大階段を下りてくる宝塚のトップスター並みの存在感で、俺の目に飛び込んできた。が、思わずぎょっとした俺に向こうが気づいた途端、その存在感がしゅるしゅると萎み、あっという間に元のモブ状態に戻った。
「あ、サンテグジュペリ、連れてきてくれたんですね」
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