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九条は今の現象に全く気付いていないのか、広瀬さんの手から嬉しそうにアメリカンショートヘアの子猫を受け取ると、無邪気に笑いながら抱っこしている。
いやいやいや、今の何? オーラの出し入れ、半端ない! しかも超無表情! はっきり言って怖すぎるんですけど! 九条は何でそんな普通なの? おかしいだろ!
「あれ? 中井、どうしたの?」
鈍感すぎる友人に慄きすら感じながら、俺はしぶしぶ二人に近寄った。あ~、やだ。何かもう、おうち帰りたい……。今日こそは猫の王様に言いたいこと全部ぶちまけてやるぜ、と意気込んできたのにこの体たらく。情けなくても構わない。猫の王様は、想像以上に得体が知れなかった。
めちゃくちゃ気が進まないまま、俺は猫の王様であり、喫茶店の完璧なウェイターであり、コミュ障のニートである広瀬さんの前に立った。
「……どうも」
仏頂面でガンを飛ばした俺を見ると、完璧に無表情だった広瀬さんは一瞬だけ、ほんの僅かに微笑みを浮かべた。
「昨日は、店に来てくれて、ありがとう」
「いえ」
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