猫の王様 ~EP.1 中井くんと猫の王様の話~

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 わざわざ俺に断りを入れるとか、一体何の話だ? 訝しく思いながらも、広瀬さんの真正面に立っていた俺は、九条と入れ替わるように数歩その場から離れた。  九条が前に立つと、広瀬さんは無表情のまま少し首を傾げた。ホント、つくづく表情ないな。昨日は表情筋ちゃんと生きてただろ。好きな奴がそこにいるんだぞ。もっと嬉しそうな顔しろよ。九条的にはこれでいいわけ? コミュ障のときは、無表情がデフォなのか?  もやもやしながら俺が見ていると、九条は少し残念そうな顔で頷き、広瀬さんに子猫を返した。 「また、あとで抱っこしてもいいですか?」  広瀬さんが微かに頷く。  ん? 何か今、一瞬場面がスキップした? 子猫を返せって台詞あった? 何でわかるんだよ。首を傾げただけだろ?  俺の疑問には構わず、広瀬さんは当然のように受け取った子猫を隣のキャリーバッグに入れた。何だ? 俺の勘違い、気のせいか?   更なるもやもやを抱いている俺の前で、広瀬さんは九条の手をそっと握り、ベンチから立ち上がった。そしてそのまま九条の前に跪く。
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