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俺の言葉を聞いた瞬間、隣の男は赤くなった顔を両手で覆った。うわお、図星か。というか、反応わかりやすいな。何だろう。思ってたのと全然違う。コミュ障バージョンも喫茶店バージョンも、一見すると取っつきにくそうだったけど、こうしていると何かいろいろと可愛いんだよな。
と、不意に向こう岸から殺意にも似た波動を感じて、俺はぎくりとした。やべぇ、九条がめっちゃこっち睨んでる。こっちっていうか、完全に俺だ。原因は一つしかない。俺は隣の男を極力目に入れないようにしながら、笑顔で九条に手を振った。またしてもぷいっと顔をそむけた友人にムカつきながら、俺は青筋を張り付けた笑顔のまま、小声で広瀬さんに言った。
「……すいません。マジで無表情に戻ってもらえます? あんたの恋人がめっちゃ俺のこと睨んでくるんですけど」
「──悪い」
そう言って上げた広瀬さんの顔は赤みも失せ、鉄面皮のような無表情に戻っていて、俺は安堵しつつも恐怖するという、滅多にない感覚を味わった。
「……何で、わかった?」
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