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「いやいやいや、普通にわかりますよ。九条が俺に見られないように、全力で隠してたじゃないですか。好きな奴が赤くなって照れてるとこ、他の人間に見られたくないの、俺にもわかるんで」
一瞬、広瀬さんの視線を感じたものの、俺たちは互いに顔を合わせないまま、主に向こう岸の九条と猫を眺めながら会話を続けた。どうやら九条は、こちらの様子が気になって仕方ないにも関わらず、全力で気にしていないふりをしようと、頑張って子猫に意識を集中しているようだった。
「というか、俺としてはむしろ、あんたに聞きたくてここに来たんですけど。あいつのどこが好きなんですか? 失礼ですけど、もともと男が恋愛対象ってわけじゃないんですよね」
「……前にも聞いてるかもしれないけど、俺はあまり人間が好きじゃない」
「はあ……」
そういや、廊下で盗み聞きしてるとき、確かにそんなことを九条に言ってたな。多少、気まずい思いをしていると、広瀬さんは淡々と付け加えた。
「別に、厭味のつもりはない」
「そりゃどうも。それで?」
こいつ相手にいろいろと気を遣うのも馬鹿らしい、と俺は開き直ることにした。
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