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「うわッ、懐かしッ!」 『タンス タンス エボリューション』に初めて興味を持つ者が現れたのは、お昼を回った時であった。常連の男性3人。同じ会社の社員らしく、お昼の帰りにゲームセンターに寄っては一つや二つ、対戦ゲームをして楽しんでいる。 「コウタくん、これ新しいやつ?」  3人の中で一番若いヤマテが訊いた。コウタも誰かプレイしてくれないかと、このゲーム機の周りをウロウロしていたのだ。顔馴染みであるためコウタも気軽に話しかける。 「今日から入ったんですよ。店長イチオシ」 「懐かしいねー、俺たちは絶頂期だったよ、この『ダンス ダン……』いや、違う、なんだこれ? ちょっと、コウタくん、これ間違ってるよ」  ネームに気がついた3人が思い切り吹き出した。コウタも苦笑いが止まらない。 「それ、間違いじゃないらしいんでしよ。それで正解見たいです。踊って箪笥を進化させましょう、って」 「なにそれ、すげー胡散臭えじゃん」 「おれもそう思ったんですが、店長がノリノリで……あ、でも! ゲームとしてはちゃんとしてるみたいなんで、よかったらどうですか? 一人でもできるみたいですし」  本気でコウタが呆れているのを見て、3人は笑えなくなったようだ。本気で同情寄りになってくるのをコウタが慌てて引き戻す。 「じゃあ……せっかくだから、やろうかな」  言い出しっぺであるヤマテが財布を取り出した。  ゲームのプレイゾーンである3×3のパネルの上に乗るとディスプレイに文字が現れた。表示されている文字をヤマテが読み上げていく。 「一回300円。それに……進化させたい箪笥をセットしてください? なあ、やっぱこれ、箪笥いるの?」  とりあえず300円を入れてみるも『タンスをセットしてね』の文字が消えず、先に進まない。 「箪笥ってどこに入れんの?」  3人の中で唯一メガネをかけたサクモトが訊く。 「ああ、それなら」とやっと答えられそうな質問がきて、コウタは指を向けた。ゲームの筐体の脇に試着室程度の四角い箱があり、音楽に合わせてピカピカ光っている。今は正面の扉が開いており、その中に箪笥を入れるのだろうと想像できた。  胡散臭そうに4人がそれを見ていると、時間切れなのか300円が返却されてくる。 
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