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ゲームのルールは単純だ。足元には3×3のパネルがあり、上下左右にそれぞれの方向を向いた矢印のパネルがある。
ディスプレイ上部にもパネルと同じ矢印が左、下、上、右、の順で並んでいる。そこをステップゾーンと呼ぶ。
曲と同時に下から上下左右の矢印が上がってきて、その矢印がステップゾーンに重なる時、タイミングよく足元にあるパネルをふむと得点が加算されコンボカウントが上がる。速すぎたりタイミングを外すとミス、点数は継続だがコンボカウントがなくなるというルール。
「曲は知らんが、結構簡単っぽい?」
ヤマテが踊りながら呟く。確かに、側から見ているコウタもそこまで難しくはなさそうだと思っていた。矢印が上がってくるスピードも遅く、足運びも簡単そうだ。終始チュートリアルのような難易度であり、終わってみればノーミスであった。
「合計130万。余裕だね」
ゲームクリア。進化おめでとう。
ディスプレイに踊る文字を指しながら、ヤマテがパネルからおりる。だが、観客である3人は彼をみていなかった。
箪笥を入れた筐体。そちらに視線が集まっている。
「あ、あいた」
コウタが言った。プシューとともに扉があく。ドキドキしながら見守るが、特に変化らしい変化なく、置かれた場所にそのままキーホルダーが一つあるだけだった。
持ち主であるヅイが近づき、恐る恐る持ち上げて見る。
「どうだ?」
「なにも変わり……あ」
「な、なんですか?」コウタが訊いた。
「引き出し、開くようになってる」
ほら、といいつつキーホルダーを少し倒すと、今まで飾りだった引き出しが少し前に出てきた。よく見るとかなり精巧に造られており、最初に箪笥を仕上げ、どうにかして縮小したかのよう。ただの四角い箱が、本物の箪笥になっていたのだ!
「進化した……と言うことは」
「本物か?」
「これ?」
社会人3人が言って。
「そんなファンタジーな」
コウタが言った。
だが、結論から言えば、本物だったのである。
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