タンス タンス エボリューション

ーー ３ ーー

　次に箪笥の進化を成功させたのは、まだ幼稚園くらいの少女とその母親だった。

　どうやら先程の社会人3人組がSNSに箪笥のことをあげたらしく、それを見てきたという。　

　ミカと名乗る少女が手にもっていたクローゼットとおぼしきプラスチック片。どうやら踏み潰してしまったらしく、直しにきたのだそうだ。

　ミカではまだ難しいと言うことで母親が挑戦し、余裕でクリア。バラバラだったプラスチック片は、完成されたおもちゃに変わっていた。

　しかも。

「まま！　これ、デラックスバージョンだよ！」

　どうやらさっきものより一段階、値段が張るものに変わっているらしい。コウタにはわからなかったが、ミカが嬉しそうなので良しとすることにした。

　続いての成功者は、若い夫婦だった。

　二人が進化に挑んだのは、ボロボロの洋服ダンスだった。高さが２mほどある大きなものだったが、捨ててきたのを拾ってきたのかと思うほど見るも無惨な見た目をしている。塗装は剥がれ、引き出しはガタガタ。洋服ダンスの上右側はハンガー掛けになっていたのだが、その扉の蝶番がひとつ壊れていた。

　成功して新しくなったら売却する予定だという。どうせ捨てるものらしく、失敗して没収されても痛くないと言うこと。むしろ捨てるお金がかからないので、どちらでも構わないらしかった。

　そして、進化は成功した。ぼろぼろだった洋服ダンスは生まれ変わり、装飾も見事な一品へと変貌していた。これなら高く売れることだろう。

　笑顔で手を取り合う夫婦がSNSに上がると、ますますゲーム機のことが話題になり、ゲームセンター『Sunny Heart』は一躍時の『店』になったのである。