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「そう言うわけだ。さっさと直してもらう」 「ちょっと待ってください! 直すって言っても、もし失敗したら」 「そんなことわかっておる! だが、そんな心配は必要ない」  来い! アサネの声で、また一人、人垣の中を歩む姿があった。  大男たちとは打って変わって、半袖短パン。色は日焼けして黒く、少し長めの髪を後ろで縛っている。大男たちも筋骨隆々であったが、この男性もなかなかしっかり体を鍛えているようで、見事な肉体をしている。 「プロのダンサー、モチミギ君だ」 「はあ……。ゲームのプロですか?」 「違う!」  聞けば、彼は本当に国内外問わず活躍するプロのダンサーだという。コウタでも名前を知っている歌手のPVにも出たことがあるということだった。だが、その世界に詳しくないコウタは彼の名前を聞いてもピンとこない。 「……と、とりあえず、これに名前を書いてください」  箪笥が消滅した時に問題にならないようしっかり誓約書をかわした後、我が子を置くようにアサネが箪笥をセットする。  彼がゲーム機前に戻ってくると同時、ディスプレイが変わり、ゲームクリアに必要である得点が発表された。 「なんだこれ……」  そこにいる全員が、箪笥の価値を確信した瞬間だった。 「100兆……点?」  ギャラリーもあまりの桁数に驚きの声が上がる。アサネは一瞬誇らしそうな顔になったが、すぐに険しい顔になり、モチミギの顔を見た。 「心配ご無用ですよ、アサネさん」  これだけの点数を前にしても、モチミギは全く焦りを見せない。 「こっちはプロのダンサーですよ。どんなものであろうと、それがダンスであるかぎり完璧に踊りこなして見せますよ」  これってダンスなのか? さあ? と会話が聞こえたが、桁数に驚く声に消されて二人の耳には届かなかった。  そして、ゲームが始まり、「これは……」思わずコウタは後退りしてしまった。  画面端から現れる、矢印の壁。もはやクリアさせることを想定していないくらいの大量の矢印が、下から競り上がってくる。スピードはむしろ遅いくらいだが、それはまるで矢印の大群が攻めてくるようだった。 「お、おい! 本当に大丈夫なんだろうな」  思わずアサネが声をかける。だが、モチミギは舌なめずりをして、最初の矢印がステップゾーンに到着するのをうずうずして待っていた。
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