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 そして矢印が重なった瞬間から、空気が一変する。 「すげ……」  誰かが呟く。  矢印の壁が、次々消費されていく。ただ闇雲に押しているわけではない。しっかりとステップを踏んでいる。右、左、と考えているうちに矢印は流れていってしまう。見た瞬間に足が乗っていないとだめなのだ。なのに、このダンサーは的確にこなしていく。  100兆と言う点数は見たことないが、この矢印の量なら納得できる。現に、まだ30秒程しかたってはいないが、すでに1000万点を突破している。 「これは、ひょっとするんじゃないか」  全員の期待が高まる。これは歴史的な瞬間を見れるかもしれない。だが、30秒で1000万と言うことは、100兆で30億秒。約95年かかる計算だ。もちろんコンボの点数があるはずなのでグッと減るはずだが、それにしても長すぎる。 (それに、この遅さだと……)  コウタが息を呑む。5000万点を越えていた。ここまでノーミス。  だが、それは唐突に来た。 「速さが変わった!」  曲調が変わり、矢印の速度も一気に上昇した。上下左右に足を動かす時間なんてとてもない、四人がそれぞれ矢印を担当をしてやっとと言うほど、速さが上がっている。  だが。  ダンサーは不敵に笑った。 「そうこなくちゃ。さっきまでのじゃ、ぬるすぎんだよ」 「嘘だろ……足が、四本に……見える」  もはやステップではない。足をばたつかせているようにしか見えない。だが、それは確かにダンスだった。画面では矢印が、しっかりとステップゾーンで消費されていく。点数がすぐに1億になり、かと思えば10億になる。多すぎる桁数を改めて数えているうちに、点数は1000億に到達しようとしていた。画面だけ見ていれば、ステップゾーンより上は行けなくなっているように思えてくるが、彼の足捌きが特別なだけなのだ。  だが、それが悲劇を産んだ。
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