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「年明けから来てくれって条件だったら、どうします?」
「贅沢は言いませんが、もっと早いほうがありがたいですね……」
男は笑ってうなずき、最後まで丁寧な字で希望のプランを書き終えた。
記入済みの用紙を捧げるようにして女に渡し、参拝を済ませて祈願成就のお守りもしっかり授かってから帰っていく。
心なしか血色が良くなっているのは気のせいか。
鳥居で一度向き直り、ペコリと頭を下げてから消えていった。
その背中にムカデのお化けは、素人の作った意外とウマいものでも食った料理人みたいな調子でわずかにうなずいて応える。
「おい、その紙を見せてみろ」
「どうぞ。
悪ふざけする中学生みたいなマネはできないくらい、抜かりのない願いになりましたよ」
ムカデのお化けは字がみっちりと書き込まれた用紙に目を落とし――てから放り投げる。
ちょうど吹いてきた風に巻き上げられ、紙は本殿よりもさらに高くまで舞い上がった。
それを見た女がまなじりを上げる。
「あっ!
また捧げられたものをそんなふうに、だだくさにして」
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